そのよん


リチャ
「…………」

すずり
「どうしたのよ毛玉、いきなり黙りこくっちゃって。アンタの唯一の見せ場とか、アピールする場所なのに、テンション低いわね」

リチャ
「唯一なのかぁっ! もうちょっと本編で、こうばったばったと巨大な武器を使ってありとあらゆる鬼をなぎ払うとか無いのか!?」

すずり
「あるわけ無いじゃないのよ」

リチャ
「がががーーーん。もっとウサギ的に泣き所とか押さえていきたいのに、感動させるウサギの座No1になりたいのに」

すずり
「無茶言わない。とりあえず後で買ってきたシュークリームでも食べさせてあげるから頑張りなさいよ」
リチャ
「なんと! それは非常にありがたき心遣い。このウサギ痛み入ります」

すずり
「ってかさ。どうしてそんなにテンション低いのよ、元気だけが唯一のとりえみたいな感じのアンタが」

リチャ
「いや、単純に冬らしさを表現して黄昏れてみた。クールに無口で、冬の光を浴びながらたたずむウサギ……絵になるかと思ってな」

すずり
「ショーウィンドウの売れ残りみたいな絵?」

リチャ
「あんですとぉっ!? このウサギ、ぬいぐるみになったら注文殺到。あっと言う間に100個の注文を集めるはずなのに!」

すずり
「一人で100個注文するウサギの姿って、微妙ね」

リチャ
「のぉーーーーーぅ! ちがうっ、ウサギ的にはそんな事しない!」

すずり
「まぁいいわ。実際にぬいぐるみが出来る訳でも無いだろうし。見せ場なんてロクに無いウサギの哀愁って事で」

リチャ
「否! 断じて否! このウサギはこう……月からの波動を受け取る事により、地表を焼き払う事の出来る兵器をだな」

すずり
「まずはアンタの毛皮を焼き払ってやるわ、その兵器で。ってか今週は解説とかしたりしないの?」

リチャ
「毛皮を焼き払うのは勘弁してください。とりあえず、それでは今週は『姫巫女の武器』ってあたりでも一つ質問に答えていこう」

すずり
「武器って、鬼と戦う為に姫巫女とかが標準装備している物よね」

リチャ
「そもそもすずりは、姫巫女はみんな別の武器を装備しているって事に対しては疑問を抱いた事は無かったか?」

すずり
「悪いけど、無いわよ。別にそんな極端な違和感とか感じたりした事って無かったし、個性ってそういうものかと思って」

リチャ
「もう少し色々と疑問とか持った方がいいんじゃないのか、すずりは」

すずり
「鬼を殺すのが目的なんだから、別に鬼を倒す為の道具が何であったとしてもいちいちこだわったりしないわよ。アタシは」

リチャ
「うぅっ、話の腰が微妙に折られてるぅぅぅぅ」

すずり
「はいはい、そこでいちいち鬱陶しく泣かないの。で、姫巫女の武器がそれぞれ違う形状ってのは何か理由があるの?」

リチャ
「巫力を使って武器を顕現させる訳なのだが。基本的には、無意識のうちにその姫巫女が戦うに相応しいというモノを造り出すって訳だ」

すずり
「……アタシの記憶だとさ。アタシが銃、穂乃香が剣、真魚が飛び道具、小鳥が竹箒で戦ってた記憶あるんだけど。小鳥の竹箒って……戦うに相応しい武器?」

リチャ
「いや、あの竹箒は近所のホームセンターとかで売られている一品だ。姫巫女の武器も、状況などに応じて破損をしたりと、使えなくなるケースが起きる」

すずり
「ややこしい事があるわね。自分の巫力で造り出した武器なのに、破損したり使えなくなったりする訳?」

リチャ
「顕現するという事は、物質としての性質を持つという事だからな。物質である以上は破損するのはやむを得ないという事になる。また、それらは時間によって修復が可能という事でもある」

すずり
「って事は、小鳥の武器は竹箒じゃなくて修復中って事かしら」

リチャ
「そうなる」

すずり
「ま、そうよね。普通に考えたらアレで戦うなんて無茶にも程があるし」

リチャ
「それと、姫巫女がそうやって顕現させる事の出来る武器なのだが。それらはすべて個人の意思によって、変化する事もある」

すずり
「それってアレかしら。アタシが本気でぶっ殺したいと思ってる時の、必殺技モードの時とか?」

リチャ
「そうそう。そんな感じで、姫巫女の武器は個人の意識によって変化する事がある。当然ながら、威力を高めようとする意思を出せばそれだけ巫力の消費は激しくなっていく訳なのだが」

すずり
「妙な質問なんだけど。それって穂乃香がアタシの銃みたいなのを造り出したりする可能性もあったりするって事?」

リチャ
「可能性だけで言うなら、ある」

すずり
「それは逆にアタシが穂乃香みたいな武器とか造ったりする事も出来るって事ね」

リチャ
「ただ、実際に可能であるのだが。他人の武器を真似て戦おうとした場合、どうしても戦力が低下する事になる」

すずり
「どしてよ? だって巫力って根源は似たり寄ったりなんじゃないのかしら」

リチャ
「単純に、すずりと穂乃香は『飛び道具』と『近接武器』という性質の差が大きい。この二つを同じように扱うのは、無茶にも程があるかと」

すずり
「ま、そりゃ当然ね。つまり、最初の個人が顕現させる武器ってのは、その個人の戦い方とかに適した形だから。他の人の武器を真似しようとすると無理が出ると」

リチャ
「よっぽどの事が無い限りは、無意味って事だ」

すずり
「ところでさ。武器を造るとかってのは理解出来るんだけど、それなら小鳥はどうして竹箒で戦ったりした訳?」

リチャ
「荒技といえば荒技なのだが。姫巫女はその巫力で武器を顕現させるのとは別に、他の道具に巫力を移して武器と為す事が可能だったりする」

すずり
「それが、竹箒だったりする訳? もっとチェーンソーとか強そうな道具を使えばいいのに」

リチャ
「竹箒はまだ普段から持ち歩くのに不便が無いが、刃物は普段から持ち歩く訳にはいかないんじゃないだろうか」

すずり
「……そうね」

リチャ
「あと、巫力を纏わせた道具によって鬼と戦う場合。この場合に関しては、正直な所、元々の道具が持ち合わせている性質はあまり意味が無い」

すずり
「って事は、チェーンソー使っても竹箒使っても」

リチャ
「一緒になる。ただどちらにしても、巫力を道具に纏わせて戦うというのは当然ながら威力が低下してしまう」

すずり
「極端な話、ポリ袋でも空き缶でもOKと」

リチャ
「その状況を想像すると、少しシュールすぎる気もするが。問題は無い」

すずり
「けどアレね。そうやって色々と知ると、ずいぶんと姫巫女の武器ってのはアバウトな面とか多いって感じがするわ」

リチャ
「自分の意思によって戦うという行為をする為、自分の意識した物を顕現させる訳だったりするからな。武器の形状とかにしても、何にしても、本人の意識が物を言う」

すずり
「アタシが望めば、それだけ武器も変化したり進化したりって事ね」

リチャ
「ただ、多少の限界というのは存在している。それは本人のイメージを越えた武器や、巫力の限界を超える武器を造り出す事は出来ないという事だ」

すずり
「イメージを越えたってのは?」

リチャ
「そうだな。現在の時点で説明するのは難しいが……仮に平安時代あたりとして。その時代には鉄砲の類は存在しない。だから、平安時代の姫巫女が、すずりの使っている銃みたいな武器を造り出す事は出来ない」

すずり
「なるほどね。どういった武器かとか、そういった存在そのものが明確な形としてイメージしずらいのは形にできないからと」

リチャ
「あと巫力の限界を超えるので単純に言うと、核爆弾みたいな武器を造り出すというのは難しい」

すずり
「そっちはイメージだけは出来そうな気がするけど」

リチャ
「とりあえず核爆弾というと、かなりの広範囲において攻撃する事が可能な武器だ。だが巫力をそんな風に広範囲に出力するなんて、何十人もの巫力をかき集めたって難しいのが現実だからな」

すずり
「ま、無茶よね。つまりの所」

・姫巫女の武器の形状は、個人の資質によって左右される。また人によっては、その形状を変化させる事もある。
・姫巫女の武器は破損、欠損する事もある。それらは時間によって修復する。
・巫力を道具に纏わせる事によって、竹箒などの道具でも戦う事は可能である。ただし戦力は大きく低下する。
・イメージの限界や、巫力の限界を超えた武器は造り出せない

リチャ
「何はともあれ、自分の武器を過信しすぎない事が重要だな。何より武器は壊れるという事は忘れないで欲しい」

すずり
「基本的に飛び道具だから、アタシの場合は困るケースは少ない気もするけど。一応、肝に銘じておくわ」

リチャ
「ところですずり。シュークリーム食べて……いいか?」

すずり
「別にかまわないけど、紅茶ぐらいはアンタが淹れなさいよね。アタシがシュークリーム買ってきたんだから」

リチャ
「任せておけ。この紅茶ソムリエと呼ばれた(事の無い)ウサギが、上等な紅茶を淹れてみせよう」

すずり
「だからどうしてこのウサギはすぐに、詐称ばかりするのかしらね。まったく、困り物だわ……」