そのきゅう


リチャ
「さて。すっかりと年末な訳なのだが、すずりはいません。何故なら、穂乃香達友人グループでお出掛けらしいのです」

小鳥
「んでさ、どうしてあたしらん所に転がり込んで来たんだよ。飼い主のいるウサギに出すエサなんてねーぞ」

真魚
「まぁまぁ、いいじゃないですか。どうせ年越し蕎麦も多目に打ちましたし、リチャードも食べるでしょ?」

リチャ
「わーい」

小鳥
「真魚、あまり甘やかすなよなー。でないとコイツは調子に乗って、また訳分からないモンこしらえるからよ」

リチャ
「いやいや姐さん、あの程度は可愛いモンじゃないですか。それにほら、ウサギ的には皆に愛されるように日々努力と精進を行っております」

小鳥
「どんな努力と精進か説明してみろ」

リチャ
「朝、目を覚まして寝起きに毛並みを整える為にシャワーを浴び、ブラッシング。優雅に紅茶を口へと運びながら、スケジュールの確認」

小鳥
「真魚、ちょっとこのウサギでダシ取れ。めんつゆがまだ作りかけだったろ」

リチャ
「のぉーーーーっ。のぉーーーーッ! どうして? どうしてこんなにウサギ頑張ってるのに!?」

真魚
「無茶言わないでくださいよ、小鳥さん。味のバランスが崩れちゃいますから」

リチャ
「えぇーーーっ。助かったけど理由はそっちですか! ウサギ愛されてないのですかぁぁっ! しくしくしく」

小鳥
「ったく、やかましいな。どうせなんだかんだ言って真魚は甘いから、お前の分までちゃんと蕎麦は準備してくれてるっての」

リチャ
「本当か! ウサギ的に信じていいのか!?」

小鳥
「ウソだがな」

リチャ
「がががががぁーーーーん!!」

真魚
「もう、小鳥さん。それぐらいにして下さいよ、完全に泣いちゃってるじゃないですか。ちゃんとリチャードの分も蕎麦はあるから、安心してね」

小鳥
「チッ」

リチャ
「なんか今ものすっごい勢いで舌打ちされましたよ、なんかウサギを精神的虐待する気まんまんですよ。白兎隊の隊長のくせに!」

小鳥
「ったくやかましーな、男のくせにごちゃごちゃと。んで、蕎麦を食うのもいいが、何か手伝って欲しいとかって話してなかったか?」

リチャ
「そうでした! そんな訳で、合いの手が欲しい所存」

小鳥
「パス1。真魚、適当に相手してやってくれ」

リチャ
「なんか酷ッ!! とてもウサギの扱い低ッ!!」

小鳥
「そういうのはあまり性に合わないんだよ。ってか合いの手だったら真魚の方が手慣れてるだろーしな」

真魚
「了解ですけど。ところで合いの手って何をすれば?」

リチャ
「とりあえずウサギ的に色々と解説をするので、そのあたりについてツッコミとか入れたりする役目という感じでおひとつ」

小鳥
「気が向いたら必殺技の一つでもお見舞いしろって事だな」

リチャ
「死ぬわッ!」

真魚
「大丈夫よ、加減はするから」

リチャ
「……ひ、ひっさつわざとかはナシの方向で。おてやわらかに……おんびんに……」

真魚
「ところで解説とかって、何を解説するのかしら?」

リチャ
「姫巫女はそれぞれ、巫力によって武器を創るのだけど。それらの名前とか、あとは効能とかを」

真魚
「効能は違うわよ。でも武器の名前とかがどうやって付けられるのか、確かに不思議に思う人もいるかもしれないわね」

小鳥
「んなモンはテキトーだ、テキトー」

リチャ
「……本当に?」

真魚
「違います。あと、小鳥さんもあまり変な事を吹き込まないで下さい」

小鳥
「でも半分は適当みたいなモンだろ?」

真魚
「小鳥さんはそう言ってますけど、正確には武器の名前はこう自分の内側から沸き上がってくるような感じなんですよ」

小鳥
「そそ、頭の中にポンと出てくるんだよな。精霊がそうささやくのかどうかは分からないが、息吹を感じ取るっていう所か」

リチャ
「もしもその時にポンと出てきた名前が『らぶりー☆小鳥ちゃんぼんばー』だったりしたら、どうする?」

小鳥
「クソなまいきなウサギにぶち込む」

リチャ
「なんでじゃぁーーーっ!」

真魚
「そんな訳で武器の名前とかは、精霊のささやきによって命名しているというのが一番正しい表現なのかもしれませんね」

小鳥
「ま、結局の所は……自分の意思で決めているのかもしれないが。そのあたり、正確な所は判断しにくいな」

真魚
「ただ精霊のささやきに耳を傾けるのもそれぞれの姫巫女自身ですし、やはり姫巫女自身が命名しているという方が適切でしょうか」

小鳥
「ああ、そうだな。そうかもしれない」

リチャ
「しかしアレだな。夜中に刃物とか拳銃とかそういったモノを持って振り回したりしていると捕まったりしないのか?」

小鳥
「戦闘中はともかく、街中をウロついてたって別に怒られやしないさ」

真魚
「そうですね。というかそれ以前に職質とか受けた事って、記憶に無いですけど」

小鳥
「普段着の時はあまり夜に出歩くなって言われたりはするけどな」

真魚
「正直、小鳥さんの普段着はちょっと露出が激しすぎるかと思うんですが」

リチャ
「ヘソばーん、だしな」

小鳥
「そか? 正直あんぐらいの方が涼しくていいんだが。ってか別に露出なんてのは趣味なんだから気にしなさんな」

真魚
「でも巫女服で街中を歩いている人がそうはいないというのもありますから。わざわざ巫女服の相手を職質する必要が無いって事かしらね」

小鳥
「あぁ、多分そうじゃないか。特に大きな鞄とかを持っている訳でも無いしな、無理に職質しなくても……巫女服を着ている人間を巫女以外に見る人もいないだろ」

リチャ
「ま、普通はそうだな」

真魚
「あと巫力で創り出した武器というのは、認知しにくいらしいんですよね。私達というか姫巫女は皆見えるのが当然なので、ちょっとわかりにくいんですが」

小鳥
「ん、そうだっけ?」

真魚
「私も正直……普段から姫巫女の武器も見えて当然という立場なので、確実とは言いにくいのですが。巫力が無い人には武器が見えにくいらしいですよ」

リチャ
「確かに武器が見えなければ、捕まって職質されるという事も無いのか。ただ巫女服の女性が歩いているだけだしと」

小鳥
「ま、そんな訳で安心して日々をみこみこして過ごせるって訳だ」

真魚
「どんな表現ですかそれ。でもとりあえず要点としては」

・武器の名称は精霊のささやきを聞き、姫巫女自身が命名している
・深夜に歩いていても姫巫女が職質を受けるケースは、基本的に無い
・巫力によって作られた武器は、一般人には認知しずらい
小鳥
「ところで真魚、そろそろ蕎麦食べよー。あたしゃ腹減っちゃったよー」

真魚
「もうちょっと待ってて下さいね、そろそろ……」

(ぴんぽーん)

リチャ
「ん? 呼び鈴のようだが……」

真魚
「いらっしゃい、穂乃香ちゃん、すずりちゃん、それに美由ちゃんに幸ちゃんも」

穂乃香
「こんばんは、真魚さんに小鳥さんに、リチャードさん」

美由
「あ、はぴにゅーいやー。ちょっと前!」


「何を適当な事を言ってるんですか、美由さんは。改めましてこんばんは、皆さん」

すずり
「ってかどうしてここにいるのよ。アンタも買い出しにつれてこうと思ったのに、なんか姿見えなくなってるし……ま、いいか」

穂乃香
「そんな訳で、幸が揚げてくれたてんぷらもありますので。あと年越し蕎麦の準備手伝いますね」

真魚
「ありがと、穂乃香ちゃん。それに幸ちゃんもお料理手伝ってくれてありがとね」

美由
「いえーいっ。もっと褒めて褒めて!!」


「美由さんは何もやってないでしょうが。むしろ美由さんはうしろでずっとゲームしてましたわ」

美由
「いやー。だってさ、料理はさーちゃんとほのに任せておくに限るじゃない。としたらこうなんてーのかな、手持ちぶたさんはあたしは遊ぶしか無いかと思って」

小鳥
「よっし、ほんじゃ美由。こっちであたしと対戦して待つ事にしよう。真魚はあまり対戦してくれなくてつまらないんだよなー」

美由
「おっけーおっけー、2Dでも3Dでもどっちでもいっちゃういっちゃうっ!!」


「そのまま明日でも別の次元でも行ってしまってかまいませんわ」

美由
「さーちゃんひどっ! でも負けないっ。むしろこれからヴィクトリーロードを歩いて栄光へ向かうのだから!!」

すずり
「やれやれねぇ、まったく。ほんと……今年も年末まで騒がしかったわ」

リチャ
「すずりは騒がしいのは苦手か?」

すずり
「あまり好きとは言い切れないけど。ま、悪くないんじゃないかしら」

リチャ
「そっか、それならいいんじゃないのか」

すずり
「そうね」

小鳥
「うがぁっ! パーフェクト負けだってぇっ!?」

美由
「いえすっ、いえすっ!! みゆちゃん素敵ィィィィィィィィッ!!」

真魚
「あまり騒ぎすぎないで下さいよ、小鳥さん、美由ちゃん。大晦日は本当は静かにするモノなんですから」


「それを美由さんに求めるのは無理ですわ……」

穂乃香
「いいと思いますよ。元気が無いのより、この方が楽しいと思いますから」

リチャ
「まあ、もうすぐ今年も終わるが。とりあえずまた来年もよろしく頼むな」

すずり
「……やれやれね。仕方ないから、お世話してあげるわよ」