そのじゅう


リチャ
「さてと、世間では正月気分も終了して。学校に通ったり、働いたりと日常の中へと戻ったりしているかと思うのですが」

すずり
「ウサギは気楽よね、そういった何か通ったりする必要が無いから」

リチャ
「だがしかし、ウサギは日々の糧を得る為に色々と努力をしているのです」

すずり
「……ほう?」

リチャ
「いやこれでもちゃんと、毛並みを整える為にブラッシングをしたり。ちゃんと情報ウサギらしく情報を集めたりと頑張ってますよ」

すずり
「まーいーわ。とりあえずゴクツブシなのは変わらないから」

リチャ
「何か評価とても低ッ!!」

すずり
「ならその情報ウサギらしく、役に立つような情報を出してみなさいよ。ほれほれ、出し惜しみ無しで」

リチャ
「ならばアレだ。ここで鬼の生態とかについて軽く語ってみるというのはどうだろう」

すずり
「……あれ? 普通ならそこでもっとくだらない事を言ってくるかと思ったのに。なんか普通ね」

リチャ
「新年最初という事で、ウサギ的にも気合い十分。脂がしっかりと乗っている、ツヤツヤのピチピチ感覚なのですよ!」

すずり
「ウサギ鍋にしてみろって事かしら、脂が乗ってるって事は」

リチャ
「のーぅ! のーぅ! そういうんじゃ無いんだ、ウサギ的にとても気力体力時の運が備わっているという意味であって、鍋はいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

すずり
「そっか、残念ね。せっかく穂乃香達も呼んであげようと思ったのに」

リチャ
「ひぃぃぃぃぃ、なんというウサギ虐待。そんな事しちゃめーですよ、めー!」

すずり
「まぁいいわ。アタシがその気になれば、アンタが次に目が覚めた時には鍋の中って事も出来る訳だしね、ふふふっ」

リチャ
「ウサギ虐待はんたぁーい!!」

すずり
「ならガシガシと頑張りなさいよね」

リチャ
「了解〜。という事で、鬼の生態についてなのだが……鬼もなんだかんだ言ってその生態にパターンが存在している訳だ」

すずり
「あにさ、パターンって」

リチャ
「鬼とひとくくりにしてしまう事によって勘違いされたりしやすいのだが。元々は精霊だった存在が鬼となる事で、いくつかの生態を取るようになると」

すずり
「いまいちわかりにくいわね。そもそもいくつかの生態って事は、グループ訳とか群れを作ったりするって事なのかしら?」

リチャ
「うむ。鬼もやはり似たような感じで、自分達を守る為に群れを作ったり、目的を持って集ったりするタイプもいる」

すずり
「それとは別にフラフラと一匹で行動するようなタイプもいたりするわよね」

リチャ
「鬼のすべてが知性や知能を大きく持ち合わせている訳では無いから、一匹で行動しているのが全部同じタイプだと思うと手痛い思いをする事もあるのだが」

すずり
「とりあえず多種多様な鬼の生態があるのは感じてたけど。もうちょっと具体的に言うとどんな感じなの?」

リチャ
「では順番に。まずは徘徊するようなタイプの個体なのだが」

すずり
「どこか適当にウロついたりするって事?」

リチャ
「日常でもっとも遭遇しやすいのがこのタイプで、欲望とか本能のままに鬼に堕ちてはそれを満たそうとする。それぞれ個体の強さは幅広く異なるが、あまり強力な個体は見受けられない」

すずり
「よく白兎隊の連中とかが、夜に歩き回っては退治したりするヤツね」

リチャ
「あとは精霊達の情報網に引っかかりやすいというのもある。そして精霊達の情報とかを集めては、すずりや白兎隊に伝えるのがこのウサギの役目!」

すずり
「驚いた……アンタ少しは役に立ってたのね」

リチャ
「なんという酷い言いぐさッ! これでもウサギ頑張ってますよぅ」

すずり
「でもさ、そのタイプで強力な個体が存在しないって理由はどうしてかしら」

リチャ
「基本的にこのタイプは成長前の段階なんだ。どんな生き物だって子供の間は筋力とか知力とかさまざまな能力は大人と比較すると低い訳であって」

すずり
「たしかにそれはそうね」

リチャ
「そしてこのタイプが生き延びて成長する事によって、その生態も変化する。まずこの時点で多少なりとも知恵や知識を吸収し、『巣』を備えるようになるのだが」

すずり
「だが?」

リチャ
「たまにそういった巣を持たずに徘徊を続けるというケースも存在する。このタイプの中でその個体の強さに差があるのは、そういった部分からだ」

すずり
「でもそれを聞く限りだとさ。そのタイプの中で成長を繰り返して巣を作らない事が延々と続いていけば、強力な個体になったりしそうなモンだけどね」

リチャ
「このタイプは巣を作る鬼よりも他の精霊とかに知られやすく、そして知られる事によって姫巫女達に情報がもたらされるからな」

すずり
「街中で野犬が延々と放置されたりしないってのと、似たような理屈って事ね」

リチャ
「そして他の精霊とか姫巫女とか、別の存在から身を隠して自身の安全を確保する為。成長した鬼は『巣』を作っていく事になる」

すずり
「その巣には何かしらの特徴があるのかしら?」

リチャ
「残念ながら、大きな特徴がある訳では無い。廃棄された建物に巣くうのもいれば、日常の中に自然と溶け込んでいる物もいる」

すずり
「ずいぶんとややこしいわねぇ、それじゃ見つからないじゃないの」

リチャ
「連中も生き延びるのに必死だからな。誰だってそう殺されたくないように、鬼も自分達が生きるのに知恵を持つ訳だ」

すずり
「確かにね。ごく自然と人間社会に溶け込んだりして、普段は平然と人間のフリをして生きてる連中もいたりしたわよね」

リチャ
「そうやって巣を持った上で巣を中心に行動する、縄張りを持ったタイプがある。これは主に巣の中に引きこもってあまり外に出るような事は少ない」

すずり
「イメージとしては蜘蛛みたいな感じで、どこかの建物とかそういった所へ棲み付いて。そこに来る相手へ襲いかかってくるって事なのかしらね」

リチャ
「あまり表に出張ってくるような事も無く、虎視眈々と獲物を狙う。その為に自分に有利な住処を作っている事が多く、屈強な姫巫女でも気を抜くと負ける事もある」

すずり
「ま、どんな連中が相手でも。負ける訳にはいかないんだけどね……アタシは」

リチャ
「あとは同じように巣を持ちながらも、街中を徘徊するようなタイプがいる。特に強力な個体が見られるのはこのケースが一番多いと言われてる」

すずり
「そうなの? 普通に考えていると、縄張りの中で自分が戦いやすい状況を整えている方が強いように思えるけど」

リチャ
「それはシロート考えだな、すずり」

すずり
「あによ、偉そうにのたまって。これでも鬼を退治している数は、アンタよりずっと多いんだけど」

リチャ
「情報ウサギは非戦闘員ですから!」

すずり
「アンタ最低」

リチャ
「ウサギに暴力を求めないで下さい。という事で、巣にいないといけない鬼というのは……逆から考えるとわかるんだが」

すずり
「巣で戦わないと勝てないから、自分の巣に他人を引き込むって事かしら」

リチャ
「いきなり正解かよコンチクショーっ!! このウサギの立ち位置を奪うなや!」

すずり
「いや、ちょっと考えればわかりそうなモノじゃないの。アンタの口からヒントは出ていたようなモンだし」

リチャ
「おうしっと」

すずり
「ついでに言うとするなら。巣に籠もるタイプの鬼と、巣を出るタイプの鬼とで基本的な戦闘力は異なるけど。巣に籠もるタイプの鬼の方が、状況によっては強い事もありうるって感じなんでしょ?」

リチャ
「うぅ……なんという洞察力。もはやこのウサギが教える事は何も無い」

すずり
「あーに言ってんだか。でもとりあえず、鬼の生態としては」

・鬼は徘徊するタイプと巣を作るタイプとがあり、徘徊するタイプは比較的弱い個体が多い。
・巣を作るタイプも、巣から動かないタイプと巣から動き回るタイプがあり、巣から動き回るタイプの方が強力である。
・だが戦闘の状況によっては巣にいる鬼も予想外の強さを発揮する為、鬼の巣に踏み込む時は注意を要する。

リチャ
「鬼に限らず、姫巫女も得意な状況があったりするから。戦う時には特に注意してかかるべき事は多いけどな」

すずり
「ま、そうね。あまり接近戦とかで、ゴリラみたいに力押しで来るような連中とかは相手にしたく無いわ」

リチャ
「すずりの場合は障害物が多い所とかも注意した方がいい」

すずり
「そね、気をつけるわ。さてと……それじゃこっちに来なさいよ」

リチャ
「ん?」

すずり
「たまにはアタシがブラッシングしてあげるわよ。アンタがあまりみすぼらしい格好してたりしてるのもどうかと思うしね」

リチャ
「よ……よろしくお願いします」

すずり
「なーにかしこまってるのよ。えっと、バリカン使えばいいのかしら?」

リチャ
「それちょっと違うッ! ちょっ、すずっ、なんでバリカンを取り出して……」

すずり
「だって抜け毛を掃除するの面倒なのよね。だからこう、いっそ楽になろうと思って」

リチャ
「いやぁぁぁぁぁっ。風邪、そんなの風邪引くからっ、やめてぇぇ!!!」