そのじゅうに


リチャ
「うーっ、さむさむっ。最近は本当に寒さが芯に来るというか、気を抜くとどこまでも冷え込んでいきそうだ」

すずり
「それだけフワフワのけだま物体のクセに、何を冷え込むとかどの口で言うんだか。こっちなんて使い捨てカイロが手放せない日々なのに。ほら、ココア飲みなさいよ」

リチャ
「おぉぉぉぉ……この冷え切った身体に暖まるココア。ありがたや、何というお気遣い、このウサギめ心に染み入りますぞ」

すずり
「バカ言ってないで飲みなさいよ。隣で風邪とか引かれたらかなわないわ」

リチャ
「んぐ……んぐ……んぐ……っ。美味いな……こう、ウサギの胃に染み渡る……」

すずり
「しかしアレね、年が明けてから冷え込みが激しくなってきたけど。まだ雪が積もったりはしないわね」

リチャ
「そればかりは地方差としか言いようがないと思うのだが。そういえば質問が来ていたなと、これだ」

すずり
「えっと……どうやら普通に一人暮らしをしているようなすずり嬢は、日本のどのあたりに住んでいるのでしょうか?」

リチャ
「あと、すずりんはどうやって生計を立てているのでしょう……といった質問もあったりする」

すずり
「と、ちょっと訂正という事で。アタシは別に一人暮らしじゃなくて、親戚の叔母さんの所で暮らしているのよ」

リチャ
「とはいえ叔母はデザイナー業を営んでおり、国外を問わず出かけている事も多いから滅多に遭遇する事は無い。特に盆や正月といった時期なども駆り出される事が多いので、ウサギも顔を合わせた事は数度しか無い」

すずり
「そんな訳で生計に関しても叔母の方から生活費などは貰ってるけど、可能な限りは全部貯蓄に回しちゃってるわね」

リチャ
「すずりは趣味もロクに無いから、あまりお金を使わないよな……」

すずり
「趣味なんて、あまり時間をかけてのんびり出来るような事があったら。鬼を倒せるようになるため、色々と勉強したり自分を鍛えるべきでしょ?」

リチャ
「正直、ウサギ的にはすずりには色々と思う所もあるのですが」

すずり
「あによ?」

リチャ
「もうちょっと色々と遊んだりだとか、漫画を買ったりだとかしてもウサギ的には悪くないんじゃないかと」

すずり
「それはアンタが漫画を読みたいだけなんじゃないの? それに漫画とかなら、穂乃香や美由が貸してくれるからいいわ。それに趣味って言うのなら、料理はそれなりに好きだし趣味って言ってもいいんじゃないかしらね」

リチャ
「そういえばすずりは自炊する事も多いな」

すずり
「幼心にね、かなり昔から自炊してたわ。おねえちゃんは忙しそうに出かける事ばかりだったから、アタシがごはん作るようにしていたし……でも訂正。料理はこなせるけれど、あまり趣味とは言えないわ」

リチャ
「どうしたいきなり」

すずり
「よくよく考えてみたら、趣味と言うほどじゃないなと思って。一度さ、幸が料理しているのを見たりしたけど、手際が全然違ったしね」

リチャ
「そんなに違ったのか?」

すずり
「アタシのは普通に作る料理でお金が取れるとは思えないけど、幸のは正直プロの道を目指してもいいんじゃないかしら。効率も手際も段違いなのよ、ものすごく」

リチャ
「なら今度、幸にはとびっきりのにんじん料理をお願いして貰いたい所存」

すずり
「……とりあえず、冷蔵庫に幸から貰った紅茶シフォンがあるけど。にんじん料理じゃないからいらないわよね?」

リチャ
「ががーーーん!!」

すずり
「冗談よ。後で一緒に食べる為にとってあるから、それは一緒に食べましょ」

リチャ
「ありがたき幸せにございます。しかしすずりの家庭環境ばかりでも何だから、他の家庭環境も一緒にお伝えしようか」

すずり
「お伝えするって仰々しいモノでも無い気もするけどね。ま、穂乃香の家は郊外に一軒家を持っている家庭ね。極端なお金持ちでも無いけれど、家族三人が仲良く生活しているって聞いた事があるわ」

リチャ
「あの親にして子ありという、珍しいタイプの家族だったな。このウサギも幾度かすずりと訪問した事があるが、親子間の愛情などが伝わってくる感じだ」

すずり
「んでもって美由の方は、実はちょっとした企業の娘さん。親は忙しくて放任主義、しかも娘の成績に関してはノータッチという事で。かなり美由はフリーダムな日々を送り続けてるわね」

リチャ
「学園でも屈指の低成績生徒だが、両親も学歴が高くないらしく。そういう意味で学業とかにとらわれずに好きにやって欲しいという方針のようだ」

すずり
「幸の家はアパートの住まいで、下に姉弟がたくさんいるとか聞いたけど。何人だったかは確認した事無いわね、遊びに行った事も無いし。むしろ幸がこっちの家に来た事は幾度かあるんだけど」

リチャ
「あとスーパーの安売り、タイムセールスでの買い物をする為に早めに帰ったりという事もあるそうだ。見た目はお嬢、中身はオバサンと美由が端的に表現していた」

すずり
「何かこう、言葉にしてしまうとものすごくあっさりと纏まったわね」

リチャ
「まぁこちらが本人では無い以上、家庭環境は大まかな部分しかわからない所もあるし。特に親子間で仲が極端に悪いとかそういった事も無い家庭なのだから、あまり多くを語りようもないだろう」

すずり
「ま、そね」

リチャ
「ちなみに白兎隊そのものの管轄は関東地区南部、東京都の一部と神奈川県が中心になっている。そしてすずりの家もそんな場所にあったりする訳である」

すずり
「真魚や小鳥が居住している場所も近いのよね、そいえば」

リチャ
「さてと、おおむねそういった感じという事で……そろそろウサギ的にはお腹が空いた所なのだが」

すずり
「ものすごく直球すぎるわね。そこまでストレートな物言いだとある意味感心するわ」

リチャ
「……てれてれ」

すずり
「あに照れてんのよ、誰も褒めてないかんね。ま、アタシもお腹空いてきたし、それじゃ紅茶シフォンでも食べましょうか。じゃ、お茶淹れてよね」

リチャ
「了解、お茶汲み六段のこのウサギにお任せアレ!」

すずり
「どうしてそんなに中途半端な数字なのよ、しかも役に立たなさそうな段位よね……」