そのじゅうはち


リチャ
「さてさてさて、白兎隊の面々に勢いとノリだけで質問を浴びせかけるコーナーも、とうとう白兎隊のラスボスこと鶴来真魚女史をお迎えいたしました!」

真魚
「そのラスボスって何かしら、なんか悪の権化みたいな感じで響きが良くないわね」

リチャ
「いや隊長が小鳥だと言われていても。実際に財布を握り、小鳥の手綱を締め、穂乃香嬢の訓練メニューを考えと。実質的に白兎隊の生命線そのものではないかと」

真魚
「本当は小鳥さんがもっとしっかりしてくれればいいんですけどね。ただ小鳥さんにお金の管理を任せますと、いきなりビールを大量に買い込まれた事がありまして」

リチャ
「本当に容赦とか遠慮って言葉を知らないんだな……」

真魚
「別にそんなお金に貧窮しているという訳でも無いんだけど。さすがに一畳分のスペースで小鳥さんの身長よりも高くビールのダンボールが詰まれた時があってね」

リチャ
「……それ、一人で飲みきったのか」

真魚
「飲んじゃうんですよね、小鳥さんって人は。それも一ヶ月と経たずに、朝から晩までもう浴びるように飲んで、飲んで、また飲んで……そういう事があってからは、二度と小鳥さんに財布は預けないと決めたのよ」

リチャ
「普通は預けたりしないよな、そんな事があったら。しかしこのウサギも大量のお金でニンジンを一畳分とかダンボールで買い占めてみたいものだ」

真魚
「そんなに大量のニンジンを食べられる訳は無いんだから、ほどほどにしておいた方がいいわよ。なによりせっかく作った食物を腐らせるのは、農家の方々に失礼よ」

リチャ
「確かにそれはあるかもっ! 文字通り腐らせてしまっては、もったいない。ウサギはウサギなりに、しっかりと残さず食べてみせよう!」

真魚
「さてさて。それで今日は届けられた質問に対して答えるという話で聞いてたんだけど、それでいいのかしら?」

リチャ
「うぃ、むっしゅ! いくつか届けられている質問に対してガシガシと答えていただけると幸い。そんな所で早速の質問として……真魚さんは百戦錬磨の副隊長と聞いていますが苦手なタイプの鬼はいますでしょうか?」

真魚
「どちらかというと大型のタイプは苦手かしら。あと生命力が高い類……大型のはえてして生命力が高い事も多いけど。とにかくタフな相手は得意じゃないわ」

リチャ
「ずいぶんと具体的というか、わかりやすいというか。そのあたりの理由というのはどんな感じで?」

真魚
「わたしの武器は一点を穿つ、そういった武器で相手の急所を突いて効果的にダメージを与えるタイプなんだけど。生命力の高いタイプは、あまり急所にダメージを与えても動きが鈍化しにくいのよ」

リチャ
「逆に動きが素早い、小型の相手とかは得意という訳になるのか」

真魚
「そうね。白い毛に包まれて耳がとても長くて垂れていてサングラスかけている相手とか得意かもしれないわ」

リチャ
「……もしかしてこのウサギ、ロックオンされてますか?」

真魚
「あくまでも例えよ、例え。わたしの武器は命中精度が特に高いから、そうそう外れるような事も無いわ。試してみましょうか?」

リチャ
「の、のーせんきゅーの方向で! そういえば命中精度とか武器のスペックに関してはどのようになってるのですかという質問もあったな」

真魚
「うーん。単純になんだけど……図式化しようかしら」







リチャ
「これを見る限りだと、非常に穂乃香嬢が弱々しく感じられるのだが」

真魚
「でも穂乃香ちゃんの場合は、将来性が他の人達よりもすごく大きいから。これからどう変わっていくかもわからない所はあるし」

リチャ
「確かにそれはあるかもしれないな。穂乃香レベルアップ! という事によっては、まだまだ伸びる訳か」

真魚
「だからあくまでも、現時点でという事を追記しておいた方が良いとは思うわ。鬼との戦いで新しい力に目覚める事もあると思うし、わたしも先輩という立場としてもっと精進しなくちゃいけないから」

リチャ
「なるほど。ちなみに質問として来ているのが……隊長や副隊長というのは、他の一般的な隊員と比較してどのぐらい戦力的に強いのですか? というのだが」

真魚
「そうね、それぞれの隊とか役割によってあまりにも差があるから戦力比較は難しいんだけど……。例えば虹鶏隊の副隊長は、完全に治癒専門だから鬼を相手にすると最弱って事になるわ」

リチャ
「最弱!? そこまで言い切って良いレベルなのか……」

真魚
「ただ確実に言えるのは、姫巫女の十二支隊の隊長というのは全隊の中でも上から数えてトップと断言できるわ」

リチャ
「あのグータラ酒飲み駄目隊長は、そんなに強いのか!?」

真魚
「鬼は基本的に生きている年数がその強さのバロメーターを表す所もあるんだけど。百歳を超えている鬼と正面から戦う事の出来る人は、隊長格の中でも半分以下なの」

リチャ
「小鳥は……戦う事が出来る方に入る訳か」

真魚
「そうね。わたしの場合は戦闘をするというより、負けない為の手段は取れるけれど。正面から戦う事は出来ないわ」

リチャ
「負けない為というのは、逃げるとかそういう事になる訳だな」

真魚
「そうね。あと相手の攻撃をいなし続けて時間稼ぎをする、防戦なら出来るかしら」

リチャ
「しかしそんな鬼が存在するって事は、姫巫女の十二支隊ってどこかポコッと壊滅したりする日が来そうだな」

真魚
「そうそう遭遇する事は無いわ。長く生きている鬼はそれこそ狡猾に、姫巫女とは戦わないようにと立ち振る舞っているのもいるから」

リチャ
「あまり派手に人を襲ったりだとかしない限りは、暗闇の中でずっと長い時間生き続けるという訳だな……少し話はズレてしまったが。とにかく隊長格の人間は、他の隊員よりずっと強いって認識で良いのか」

真魚
「あまり自分が特別に強いだとか、そんな風に考えた事は無かったけど……そうなのかもしれないわ」

リチャ
「ところで話はズバンと変わるが、得意科目とか苦手科目はどうだろうか?」

真魚
「え? わたしの場合はどちらかというと生物が得意かしら。あと身体を動かすのは割と慣れているから、体育は得意になるわ。でも……穂乃香ちゃん達みたいに学校には通ってないんだけどね」

リチャ
「それはまたどうして?」

真魚
「わたしは鶴来という、姫巫女の中でも少し古い家柄だったから。教育とかは人を呼んで学んだわ。勉強を教えてくれた人達が言うには、標準的な大学生レベルの勉学は出来るぐらい……みたい」

リチャ
「すると苦手科目というのは無いのか」

真魚
「現代文に該当するのは少し苦手ね。漢字の読み書きはともかく、文章を読んで相手がどう考えるか答えなさいという類の設問は……難しいわ」

リチャ
「では次の質問っと……真魚さんと小鳥さんは真藁という鬼と戦ったという話がチラリと出たのですが。そういった過去についてはどうなっているのですか?」

真魚
「正直、あまり他人に話すような事でも無いわ。とても強い鬼がいて、その鬼は用意周到で手強くて。三つの隊の人達を集めて戦わなくちゃいけないぐらいに、大勢の鬼を従えたわ」

リチャ
「数十人もの姫巫女が一つの群れに対して戦いを挑むケースというのは、そうそう起きる事じゃないんだよな」

真魚
「結果、白兎隊の姫巫女達は大きく失われてしまったわ。わたしを守る為に盾になってくれた子達もいるから、その分だけわたしは戦わなくちゃいけないと思う」

リチャ
「何にせよ、あまり触れられたく無い話題でもあるという事だな。ではこの話題はこれぐらいにして……最後、他の白兎隊隊員について」

真魚
「小鳥さんは、普段はお酒ばかり飲んでいて駄目な人です。でもあの人は人に見えない場所で鍛錬したりする事が多いんですよね」

リチャ
「それは初耳!」

真魚
「なんでしょうね。大人なんだけど、すごく子供な人で。それでも明るくてまっすぐな所があるから、とても安心して一緒に戦えます」

リチャ
「何かものすごく高評価というか、そこまで小鳥が褒められてるのは始めて聞いた気もする……」

真魚
「でも悪い部分を挙げたらそれはそれでキリが無いわ。基本的に小鳥さんって、グータラを地で行ってるし。人の事をすぐに騙すし、お部屋掃除もしてくれないから……」

リチャ
「やっぱり駄目隊長は駄目隊長でしたという事だな」

真魚
「すずりちゃんは少し接点は少ないけど。でもすごく穂乃香ちゃんの事を信頼している所があるみたいね」

リチャ
「あぁ、それはウサギも思った。基本的にすずりは姫巫女全体をあまり好んでないようだが、穂乃香嬢に関しては別だと言い切ってるしな」

真魚
「ただ体力の方は少し足りない所があるとは思うわ。もう少し走り込みとか激しくした方がいいとは感じたりするんだけど……」

リチャ
「それでもずいぶんと体力から何から鍛えられてるようには感じられるがな、ウサギから見ると」

真魚
「もっと欲しいわね。姫巫女は確かに巫力を使って戦うけど、戦う為の基本的な体力はあくまでも姫巫女自身にあるから。巫力だけ残っていても体力が無くなっていたら、戦う事も出来なくなるわ」

リチャ
「すずりにもニンジンを食って体力つけろと告げておきます」

真魚
「穂乃香ちゃんは、すごく素直で頑張りやさんで。それが時々心配になっちゃうかな」

リチャ
「頑張りすぎるのが心配?」

真魚
「頑張りすぎる子って、思い詰めちゃうと自分を傷つけたりする事もあるから……。もうちょっとだけそのあたりは、肩の力を抜いてくれた方がいいと思うんだけど」

リチャ
「でもそうもいかないという事だな」

真魚
「そうね……」

リチャ
「さて、それでは今回の質問はこんな感じだろうか。一人一人にスポットを当てながら質問していくという機会は今回で終わるが。また個人的な質問などがあったりした場合などは、メールとかで聞いてみて欲しい!」

真魚
「よろしくお願いね」