そのじゅうく


リチャ
「春一番も吹いたりしたおかげか、なんだかずいぶんと暖かくなったというか。ウサギ的にもグーグーと居眠りしたい季節だな」

すずり
「季節関係なく、惰眠を貪るのがアンタの得意技のように思えるけどね」

リチャ
「ま、細かい事は気にするなや。生き物は休息が必要であり、それを欲しがる時こそ睡眠を取るのに適している。つまり気付いたら寝てた」

すずり
「はぁ……本当にウサギってのは気楽な種族でうらやましいわ。アタシはどちらかって言うと、この眠気に耐えるのに大変なのに」

リチャ
「よし、このウサギが添い寝しよう。たんまりと寝るがよいよい」

すずり
「アンタ人の話聞く気無いでしょ。こっちは必死になって眠気に耐えようという事で頑張ってるって言ってるのに、このクソウサギ」

リチャ
「まぁ軽い冗談はともかくとして。インタビュー形式も終わったので、その間にこっそりと来ていた質問など答えていくようにしようか」

すずり
「ん、コレね。どうして姫巫女は、わざわざ巫女服で戦うのでしょうか? あんなに動きにくい格好をしなくても、ボディスーツとか水着とか、身体の動きが阻害されないような服の方が戦いやすいと思うのですが」

リチャ
「すずりは巫女服で戦ってないし。確かに巫女服で戦う必要性というのがいまいち感じられにくいようには思えるな」

すずり
「ってか確かにどうしてなのかしらね」

リチャ
「またそのあたり、理由は二つ存在している」

すずり
「ずいぶんと具体数がハッキリしてるわね、それは」

リチャ
「まず単純に、形式としきたりという部分が一つある訳だ。すずりが普通の衣装を着て戦ったりしている事もあるように、服装についての規定などがある訳じゃない」

すずり
「というか、それがもしもあったら小鳥の巫女服なんてどうなのよ? ってのもあったりするしね」

リチャ
「極端な話、水着とかで戦ってもいい訳だ」

すずり
「ウサギの毛皮で作ったコートで戦う姫巫女がいてもいい訳ね」

リチャ
「そんな怖い事言うなや!! 泣くぞ、聞いただけで部屋の片隅にダッシュして、ブルブル震えながら泣いちゃうぞ!!」

すずり
「落ち着きなさいよ。そもそも、そんな姫巫女がいたら引くわ。というか撃つわよ」

リチャ
「ふぅ……そいつは何よりだ。いきなりすずりがウサギの毛皮でコート作りたいとか危険な事を言い出すかと思った」

すずり
「暑苦しい事言わないでよね。そもそもこれから季節も徐々に暖かくなるんだから、毛皮のコートとか着たくないわよ」

リチャ
「すると今年の冬は、ウサギぴんちですか?」

すずり
「実はアンタ、コートにされたくて仕方ないんじゃないかって気がしてくるわ」

リチャ
「正直ごめんこうむりたい所存。とりあえずそんな訳で、姫巫女という立場であっても必ず巫女服を着なければならないという義務もなく」

すずり
「小鳥みたいな感じで、巫女によっては自分の着やすい服装とかに趣味で改造している人もいるという訳ね」

リチャ
「結局の所はどうしてかというと、巫女服を着るというのはそれぞれ姫巫女が抱えている決意を表している訳だ。言うなれば戦装束」

すずり
「つまり伝統だとかも含めて、今までの流れがそうであったから、自然と姫巫女は巫女服に身を包むという事になるのね」

リチャ
「だからもし時代がさらに流れて、巫女服の形式が大きく変わったりしたら……それこそ水着を中心としたような姫巫女スタイルになるかもしれない」







すずり
「って、袖はそのままなのね」

リチャ
「そのあたりはアレだ、巫女服の袖は中に暗器を仕込んだり食べ物を仕込んだりと。さまざまな用途によって使用される事を視野に入れられているからだろう」

すずり
「アンタそれは確実に勢いだけで言ってない?」

リチャ
「暗器とか食べ物かどうかはともかく、あの袖に物を仕込むという説は一部で本当に存在するらしいぞ」

すずり
「言われてみれば確かに何か入っていてもおかしくない気はするけど……」

リチャ
「さてと、それではもう一つの理由なのだが。実は姫巫女が来ている服というのは、多少なりともその製作過程において巫力を込められている」

すずり
「え? つまり巫力として力を貸してくれる精霊が巫女服を縫ってるって事?」

リチャ
「いやいや。さすがに縫い物とかを平然とこなすような精霊とかはそうはいないが」

すずり
「アンタ縫い物とか出来たじゃない」

リチャ
「そこは誰もに愛されるラブラビッツですから!」

すずり
「理由になってないから、それ。んでまぁ巫力が込められているって言うのはわかったんだけどさ、実際にその巫力ってどれだけ効果があるの?」

リチャ
「冬は暖かく、夏は涼しい」

すずり
「……は?」

リチャ
「少し真面目な話。生物は自分が思っているよりも外気からの影響を受けやすかったりする訳なのだが」

すずり
「ま、確かにそうね。炎天下の下で戦い続けろとか言われても、限度があるし」

リチャ
「そういった環境での適応面に対して、巫女服に秘められた巫力が身体を護ってくれる。多少暑いとか暑くないという部分があるのには変わらないがな」

すずり
「地味な面でのサポートがあったりする訳なのね」

リチャ
「あとそういった加護があるからといって、砂漠とかで水も飲まずに戦い続けるとか人間離れした所業が出来る訳でも無いから注意だ」

すずり
「どう考えても自殺行為すぎるじゃない、そんなの」

リチャ
「あくまでも補足というあたりで」

すずり
「でも巫力が入るだけでそんなに服としての意味が変わるなら、アタシの服もアンタが仕立てるってのはどうかしら?」

リチャ
「無理! というかウサギにどんな重労働させるつもりですかい」

すずり
「ま、それは冗談よ。そういう服が欲しいってのなら、姫巫女になりなさいって事になっちゃうだろうしね」

リチャ
「さてっと、今回はこんな感じという所だろうか」

すずり
「ん……しかし本気でアタシも眠くなってきたわね。ちょっとぐらい昼寝しようかな」

リチャ
「ウサギは眠気が覚めてきたので、何か相手して欲しい所存」

すずり
「あにこのわがままウサギ。今さっきまで昼寝推奨派だったくせに、いきなり手のひらひっくりかえされて驚いたわよ」

リチャ
「まぁ冗談だ。リチャード稲葉はクールに外出してくる」

すずり
「はいはい、悪さしちゃ駄目だかんね。……さてと、ちょっと昼寝でもしようかしら」