そのにじゅういち


すずり
「……ま、穂乃香には喜んでもらえて良かったけど。でも、誰の入れ知恵だった のかしらねぇ?」

リチャ
「ん、何の事だろうか?」

すずり
「先日のお礼にって事で穂乃香を招待するってアイデアは確かに良かったけど、 アンタのウサギ脳じゃ出てこないんじゃないかと思ってね」

リチャ
「いや失敬な! これでもウサギは世界平和と愛の為に、日夜頑張っている訳な のですよ神がかってる程に」

すずり
「あまりウソばかりついてるとそのうち、オオカミ少年ならぬオオカミウサギっ て呼ばれるようになるわよ?」

リチャ
「幾人もの精霊達(ユーザー様)からの助言をいただきました」

すずり
「なるほどね。でも良かったわ、これで何か胸のつかえが上手に取れた感じね」

リチャ
「それは何より……きゅっきゅっきゅーーッと。皿洗い完了しました!」

すずり
「ありがと。こっちもリビングの掃除が終わったわ……あと冷蔵庫にケーキある から。お湯を沸かして紅茶を淹れて、食べながらゆっくりとしましょ」

リチャ
「わーい。さてさて、そんな訳でお湯を沸かしてる間に今回も色々と始めたい訳 なのだが、質問がギュッとまとめて届いているのでガンガン答えたいと思う」

すずり
「んっと……過去にあった部分からの質問の派生ね。どうして鬼と姫巫女とのハ ーフの子供は、強力な力を持ちうるようになったか?」

リチャ
「少し乱暴なモノの例え方をするのだが。品種改良……特にサラブレッドなどの 馬をイメージしてもらえるとわかりやすいんじゃないだろうか」

すずり
「それはつまり、一般人の女性よりも巫力を持っている姫巫女を襲った方が、よ り強力になりやすいという事なのね」

リチャ
「それと血統などの話で、別の血を入れた方が良くなりやすいという事もある。 だからこそ鬼は人を抱いて過去に姫巫女という存在を作った訳でもある」

すずり
「あくまで確率とか統計とかの集大成なお話って事なのね」

リチャ
「そういう事だな。ちなみに鬼と姫巫女が種族が違うのに孕ませる事が可能なの は、鬼という種の特性でもある。元々が精霊であり、鬼と言っても授肉する際に さまざまな形を取る事も出来るように、あまたの種族と子を成す事が出来る」

すずり
「じゃ、どうして人間の女性ばかり狙うのよ?」

リチャ
「ウサギは鬼では無いので正確な所は把握しかねているが。人間という身体が鬼 からすると一番子を成すのに適している、という事なのだろうな」

すずり
「非常にはた迷惑な話ね、それ」

リチャ
「栄養のある土地には木々が根を下ろし、虫も集まり、実りとなる。つまり他の 種族よりも人の方が良いと。ただ基本的に排卵日とかそういった部分は影響して ないようだが」

すずり
「そいえば鬼と人のハーフみたいなのって聞いた事が無いわね」

リチャ
「いや……ぶっちゃけ。すずりも穂乃香嬢も、姫巫女は基本的に鬼と人とのハー フみたいな物なのだが」

すずり
「はぁ!? あんでさ!!」

リチャ
「ハーフだからといって、必ずしも外見的特徴が半分こになったりするという訳 では無いという事だ。そもそも巫力が使えるというのは姫巫女の血族である訳で 、元を辿れば祖先の父方は鬼になるしな」

すずり
「アタシはてっきり。基本的にハーフって言うと、半鬼半人の存在みたいなのを 想像していたわよ……」

リチャ
「鬼の一部には、普段は人に擬態しながら戦闘時には獣の特徴を濃く出すという タイプのも存在しているがな」

すずり
「話だけ聞いてると強そうね、それは」

リチャ
「そうだな。鬼によってはあまりに上手すぎる擬態によって、完全に人間社会に 溶け込んでしまっているようなのもいる。それこそ、人として暮らしているのが バレないぐらいの存在もいる……らしい」

すずり
「あんで最後そんなあやふやなのよ」

リチャ
「バレてないって事は、精霊達やウサギの情報に引っかからないほどに完璧な溶 け込み方をしているという事なんだ」

すずり
「もうちょっと頑張りなさいよ、情報ウサギ」

リチャ
「うぃ……努力だけは積み重ねてみまっす」

すずり
「でもエステに通ったりしている鬼って、それはそれでいたら凄いわね」

リチャ
「もはやそこまで来ると、鬼と人との境界線がいかに曖昧かというのも感じたり してしまうな」

すずり
「案外そういうモンかもしれないわね。人と鬼との境目を決めるのは、その身体 とか特徴ではなくて。生き方や在り方なんじゃないかしら」

リチャ
「すると?」

すずり
「たまにニュースに掲載されてる事件があるじゃない。残虐行為として、住民全 部を皆殺しにしたりとかいう強盗殺人とか……アレは人のしわざというか。人で あって人じゃないのよね、そういうのが出来るのって」

リチャ
「確かにな。人が人である事、人としてまっすぐな道を進んでいく事、そういっ た正道から堕ちた人間は鬼のような存在かもしれない」

すずり
「さてと、次の質問は……周期による体調不良においての影響、ねぇ。実際に体 調が悪いせいか巫力が弱まっているような気はするけど。でも巫力とかって集中 力とかそういった部分でも左右されるんじゃないかしら?」

リチャ
「そうだな。実際に統計とかを取りずらい問題でもあるからアレだが。ただ周期 で巫力そのものへの影響というのは無いのかもしれない」

すずり
「本当に体調が悪い時とかは、戦わないようにするのは当たり前だしね。そうい う休みの日があるのかどうかはともかくとして」

リチャ
「ま、当然と言えば当然という事か」

すずり
「もしもの時には、そりゃ多少の体調不良とか関係なしに戦わないといけない事 はあると思うけどね。何せ鬼と戦うのはリスクも大きい訳だから、そこで泣き言 とかを口にしてられないだろうし」

リチャ
「でもあまり無茶はしないで欲しい。やはり鬼に負けた時は……酷い目に遭わさ れるのがわかりきってるからな」

すずり
「ま、ね。とりあえず……こんな所かしら?」

リチャ
「そうだな、それではお湯も沸いたから紅茶を淹れてケーキタイムと行こうか」

すずり
「そうね」