そのにじゅうに


リチャ
「ちょっと聞いて下さいよ奥さん」

すずり
「誰が奥さんよ、誰が。ってかあによ、いきなりさ?」

リチャ
「先日にちょっとウサギが夜に散歩をしにいくと、綺麗な綺麗な夜桜があったのですよ。しかも季節柄、満開」

すずり
「それはずいぶんと風流というか、イイ感じじゃないの。どこなのそれ?」

リチャ
「墓場に生えてたんだけどな」

すずり
「めっちゃ怖ッ! あによそれ! 全力で桜があんなにも赤くて綺麗なのは、死体が埋まっているからってのを地で行ってんじゃないのよっ!!」

リチャ
「でも桜ってピンク色とよく言われるが、あまりあの花びらってピンクよりは白寄りだとウサギ的には感じるのだが」

すずり
「ま、それは確かに白いのをよく見るような気がするわね」

リチャ
「なので桜色イコールピンクという常識を、今こうして打ち破ってみたい所存!」

すずり
「別に常識を破る破らないは勝手だけど。そう簡単にそこらの世間の認識は変わらないと思うわよ」

リチャ
「難しいモノだ。現実に即してないリアルというのは」

すずり
「ま、ピンク色に近い桜だっていくらでもあるんだし、素直に諦めなさいな。あと冷蔵庫に桜餅買ったの入れてあるから」

リチャ
「桜餅に免じてピンク色でおっけー!」

すずり
「何様よアンタ。ま、とりあえず最終回って事で、届いている質問に……と。穂乃香さんは武器で剣を使っているようなのですが、ぶっちゃけ『バンブーブ○ード』のたまちゃんとどっちが強いでしょうか? ……すごい質問ね」

リチャ
「そりゃどう考えても、バ○ブーブレードのたまちゃんの方が強いから安心してくれ。穂乃香嬢は巫力を使えて、剣の振り方は教わっているが。十数年間も剣道に打ち込んできた人間に勝てるはずがないからな」

すずり
「ずいぶんあっさりと断言したわね」

リチャ
「基本的に人間、積み重ねが大事という事だ。努力が必ずしも実を付ける訳では無いが、成功した人間はすべからず努力している……そういう事だ」

すずり
「どこかで聞いた事のあるような言葉ね、それ」

リチャ
「だがそれは真実かと。たまに奇跡や特例として、ありえないぐらいの天才が努力している人間を打ち負かすケースもあるが。それは本当に稀な事であり、普通に穂乃香嬢が頑張ってもたまちゃんには勝てないんだよ」

すずり
「仮定としてなんだけど。穂乃香が日々努力を続けて、たまちゃんと良い勝負が出来る日が来る可能性はあるの?」

リチャ
「その可能性はゼロじゃないかもしれない。だがどんなに早くても数年後だろうし、数年分の積み重ねという下地の差を埋めるのは相当な努力が必要になるだろうな」

すずり
「ま、それはそういう事ね。そして次は……すずりは銃使いですが、ドラえ○んに出てくるのび太とどちらが強いでしょうか……って、あにこの似たような質問二連発は?」

リチャ
「同じ人からの立て続けの質問だしな、ぶっちゃけ」

すずり
「勝負にならないわよ、正直。あっちはギフト持ちというか、特殊能力持ちだもん。普通に百発百中とか、ありえないから」

リチャ
「でも逆に学校の成績はすずりの方が上だよな」

すずり
「あれだけ0点を大量生産する人間に負けろっていう方が難しいわよ」

リチャ
「とりあえず他にも質問があったりするが。すずりや穂乃香嬢は正直、万能でも無ければ超人でも無いので、そういったキャラクターと勝負して勝つような事は無いという事でここは一つ」

すずり
「というか、ゴ○ゴとか次元○介みたいなキャラを並べて、どちらが強いですか? とか言われても困るわよっ!!」

リチャ
「それでは次の質問という事で……鬼と姫巫女との協力関係は無いのか? というのが来ているのだが」

すずり
「あるの? アタシは姫巫女じゃないから、そのあたり知らないけど」

リチャ
「基本的に協力関係は無いと聞いている。というのも、鬼はどうして鬼であるのかという部分の中に『鬼は人に害を為す、人を食料と思っている』というのがある」

すずり
「乱暴な表現をすると、生態系で人よりも強い存在だって事なのね?」

リチャ
「なので人に対して翻弄するような情報を流したり、人に協力をするフリをしては弄ぶという事はする。そもそも鬼が人と対等な協力関係として共存しようという意思がない」

すずり
「人間社会に溶け込んで影響を受けたりして、何か目覚めるような鬼とかいたりはしないのかしら?」

リチャ
「現状では皆無かと。そもそも人間社会に溶け込んで影響を……というが、人間社会そのものだって綺麗な物でもないからな。そういった部分を見て、人間賛歌という発想に鬼が辿り着くのは難しいだろう」

すずり
「夢も希望も無いというか、確かにそれは否定できない所が痛いわね」

リチャ
「あと仮に共生を訴えようとした鬼がいたとしても、姫巫女の連中がそれを受け入れない可能性は非常に大きいというのもある」

すずり
「え? あんでよ? 別にいいじゃない、仲良くすれば。その方がお互いの利益になるんじゃないの?」

リチャ
「過去、鬼がそういった情に訴えるという手段でもって姫巫女の切り崩しに走り、一度は壊滅的な打撃を受けたというケースがある」

すずり
「……さすが鬼ね」

リチャ
「以来、姫巫女達にとっては鬼が訴える共生を信じて受け入れようという発想は、ほぼ皆無に等しくなったと」

すずり
「一度詐欺に遭えば、そりゃ普通は警戒したりするのも当然の事よね」

リチャ
「なので鬼に所属している以上は、どんなカテゴライズであっても否定して叩き潰す。それが姫巫女の立ち位置でもあるという事だ」

すずり
「受け入れない可能性が大きいってより、それは受け入れ拒否って言うんじゃないのかしらね……」

リチャ
「と、そんな感じで。これでとりあえず口伝は一段落という事なのだが」

すずり
「ずいぶんとあっさりした終了って感じね。これでも半年近くやってたのかしら」

リチャ
「こう振り返ってみると、ウサギ的にもプチ感動があるな。感慨深い」

すずり
「なにはともあれ、ひとまずはご苦労様って所ね。まぁアンタもずいぶんと頑張ったじゃないの」

リチャ
「なに、これも情報ウサギとしての務め。クールにホットな情報を色々とお伝えできたと思う」

すずり
「その割には、いくつか答えてない質問とかあるんじゃないかしら」

リチャ
「……ウサギの都合です……」

すずり
「今ものすごい卑怯な逃げ方されたような気がするけど、まぁいいわ。それじゃ、桜餅を持ってくるわね」

リチャ
「うむ、桜咲く中で食する。まさに風流だ……」