閑話:いち


小鳥
「ところでさ、あたしゃ思うんだよ」

真魚
「どうしたんですか、やぶからぼうに。いくら新しい切り出し方を考えても、今月のビールは増やしませんからね」

小鳥
「ぬおっ! 小鳥ちゃんピンチ! と、いうのは置いておいてだ。こうさ……白兎隊も戦隊モノっぽい空気とか出してみたらいいんじゃないかと思ってな」

すずり
「なんか駄目隊長がすっごく危険な事を言い始めたわね……」

穂乃香
「いいですね。そういうのってちょっと憧れてたんですよ!」

すずり
「ぅぁ……なんでそんなに穂乃香は食いつきがいいかなぁ。ま、まぁ……穂乃香がそう言うならつきあってあげなくもないけど」

小鳥
「実はもう配色は決めてあるんだな、これが。って事でこの紙を見てくれ」

真魚
「どうしてそんな事ばかり準備が早いんですか、小鳥さんは」

リチャ
「ウサギは? ウサギもちゃんと数にカウントされてるのかっ?」

小鳥
「おうともよ。何せ戦隊モノは五人いないと成立しねーからな。ま、たまには三人からスタートするのもあるが」

穂乃香
「えっと、私は……ハクト・ピンクなのかしら」

すずり
「アタシ白兎隊じゃないんだけど……ま、名前はともかくとして。アタシ黒なのね」

リチャ
「ウサギは……イエロー? ちょっ、なぜウサギなのに黄色なのか理由を所望!」

小鳥
「あぁ、空いてたからだ。ま、別にカレー好きでも太ってもねーけど、とりあえず空きがあったらそこに突っ込むしかねーだろ?」

リチャ
「し……白っ、ウサギの体毛にもピッタリで、クールな印象を与える白を所望!!」

小鳥
「おもしろくないから駄目だ、諦めろ」

真魚
「わたしが青なんですね。でも、こんなライバル系な感じでいいのかしら?」

すずり
「ところでこのタイトルの『白兎戦隊・巫女マン』ってさ。アタシ達は女性ばかりなのにどうしてマンなのよ」

小鳥
「そのへんはお約束なネーミングって感じだからな。それに巫女レンジャーって、どこかで聞き覚えがあるから避けた」

リチャ
「どうでもいいが、巫女マンって新手の中華まんにも聞こえるな。こう、紅白な感じで皮を作ってあって。中身は普通にこしあん、お餅入り」

穂乃香
「いいですねそれ。あ、なんか美味しそうというか、ちょっと気になるかも……新商品として出ないかな」

真魚
「あ、こしあんで思い出したわ。先日に虹鶏隊の此葉から新茶が送られてきたから、準備するわね」

穂乃香
「此葉さんって以前に言っていた、真魚さんと同期の方でしたよね。確か各務此葉さんという名前だったような」

真魚
「えぇ、そうね。同期というよりは、実家同士が仲が良いのよ。鶴来家と各務家はお互いに姫巫女の中でも古い家柄に該当するから、お互いに協力したりした事も多いのよ」

すずり
「あ、そいえば新茶で思い出したわ。先日に幸から聞いた和菓子のお店でかしわ餅を買ってきたのがあるから……ほらリチャ、出して出して」

リチャ
「(もぐもぐもぐもぐ……)ん?」

すずり
「あに勝手に食べはじめてんのよアンタっ!」

リチャ
「いや、ついうっかり……こうイエローらしく大食らいキャラを演出してみようかと」

小鳥
「真魚〜そこのけだまも一緒に沸騰させてやってくれ」

リチャ
「のっ、のぉっ! ちょっ、まっ、大丈夫だからっ、ちゃんと他の人の分は残ってるからどうかお許しおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」

すずり
「とにかくアンタは先に食べたんだから、アンタの分は無しね。ところで小鳥、この戦隊モノのフォーメーションっていうのは何か役に立つのかしら?」

小鳥
「ん? 役に立つ立たないじゃなくて、こーいうのはアレだろ。普段からこなしておく事によってイザって時の足しになるんだよ」

すずり
「いや、ちっとも足しにならないでしょ? ってかそれワケわかんないから」

小鳥
「なんだよ、せっかく人がやる気出して準備すればコレかよ。まったく真面目に隊長してるってのに、それを汲み取って貰えないのは悲しいなぁ」

真魚
「……いつもそれぐらいに真面目にやってくださいよ」

穂乃香
「でもこういうのって面白いですよね。目覚めよ、ボクらのハクトガッツ! ってこのあたりの下りとかいいじゃないですか。太古から続く白兎の遺伝子が身体の奥で燃え上がって、敵を倒すとかいいですね」

小鳥
「ちなみに火薬も買い込んである。月末に請求書来るから、真魚よろしく」

真魚
「……今、何て言いました?」

小鳥
「請求書よろしく」

真魚
「ちょっと小鳥さん、ゆっくりと話し合いましょうか。えぇ、隣の部屋まで顔を貸してもらえるかしら?」

小鳥
「あ、あれ? ちょっと真魚……どうしたそんなに怖い顔して。なんてーかほら、平和的な対話を望むんだが……うわっ、耳を引っ張るなぁっ、いたっ、いだだだだっ、いだぁっ! めっちゃ痛ッ! 痛すぎるっ!!!」

リチャ
「おたっしゃで……駄目隊長。しかし、ウサギの記憶だと火薬の取り扱いには免許とか必要だったような気がするんだが」

すずり
「必要ね、間違いなく。というかこんなある程度の量を準備するなんて、いったいどんなルートから入手したのかしら」

穂乃香
「変ッ身! ハクトピンク!!  どう? 今のけっこう上手くいってたと思うんだけどな。この腕の角度とか、良かったんじゃないかな」

すずり
「……あに一人で盛り上がってんのよ、アンタも。ってかよくやるわ」

穂乃香
「えーっ、すずりもやろうよ。こういうのってみんなでやると楽しいよ?」

リチャ
「変っ身! ハクトイエロー! どうよ、今のウサギ的にもかなりクールにポーズが決まっていたと思うんだが」

穂乃香
「うんうんっ、ばっちりばっちりっ。ほーらっ、すずりも練習しようよ、こういうのは皆でポーズ固めないとねっ」

すずり
「ちょっと、それはアタシのキャラじゃないというか。……って、そんな捨てられた子犬のような目をしたって駄目よっ!」

穂乃香
「やろうよ、すずり〜、一緒にハクトガッツしようよぉ〜」

リチャ
「せっかくだしな!」

すずり
「わっ、わかったわよ……っ。もぉっ! でもちょっとだかんね、ちょっとだけだからねっ!」

小鳥
「ぎゃあああああああっ、すまっ、真魚許せっ! これも隊員の志気と協調性を高める為の必要経費だという事でだなっ!!」

真魚
「そういうのは普通ポケットマネーでやるものでしょうがぁっ! この駄目隊長、馬鹿隊長っ、ドグサレ隊長っ!!」

小鳥
「ぬおおおおぉぉぉっ。ちょっ、手加減とかそういうのは無いのかっ、やめっ、痛っ、もげ……もげるっ、もげもげぇぇぇ!」

すずり
(……アタシが考えるのも何だけど。姫巫女って本当に大丈夫なのかしらね)