その時、一陣の白い風が吹いた。
凶悪な体躯をし、凶暴な外見を伴った鬼が、すずりや穂乃香の命を奪おうとしていたその刹那。颯爽を駆けつけた、グレートビューティフルセクシーうさぎ。
ヤツの名はリチャード、リチャード稲葉。
誰もが憧れるソウルフルでナイスガイ、さらにクールなうさぎだ。
「おっと、そんな拳じゃ届かないぜ。もっとクールに決めないとな」
まるで芝居かかった口調。
でもそれは口先だけではなく、鬼が渾身で放った一撃を片手で軽くあしらっているあたりから、うさぎの隠された実力が顔をのぞかせる。
いや、まだうさぎの表情からは余裕が見て取れた。
「……ぶみっ」
しかしそんな鬼とうさぎとのやりとりを、電柱の上から観察しているねこが一人。
彼の瞳にはそのうさぎが勝つ事を確信し、同時にいつかねこの前に最大のライバルとして立ちはだかる事を予見していた……。
「ってか早く起きなさいよ! 朝ご飯ちっとも片付かないじゃないの!!」