【002】
リチャ
「ウサギがクールな足取りでとある村へとたどり着く。陽が落ちてすっかりと周囲は暗くなったので、宿屋へ早く行きたい予感」
ライカ
「こんばんは、珍しい格好をしているわね」
リチャ
「おろ? こんばんは、あっしはリチャード稲葉と申します、クールな情報ウサギとして旅をしている最中」
ライカ
「ん、そーなんだ。実はウチって【プレーリー亭】って名前の宿屋をやってるのよ。お金のない旅人さんでも安心寝泊まり保証、酒場もセットで豪華なお食事も保証するわ」
リチャ
「なんと! それは非常にウサギ的にもありがたい限り。何せ寝泊まりする宿屋を探していた所なので、まさに渡りに船」
ライカ
「なら案内するわね。わたし【ライカ・ウェルシュ】って言うの。今はお店の手伝いをしているけど……冒険者志望なんだ」
リチャ
「冒険者! でもずいぶんと危険が多いのでは無いだろうか。冒険者という事は、巨大なドラゴンと戦うという事も聞いた事があるのだが」
ライカ
「んー、ドラゴンがいるって話はたまに聞くけど。ドラゴンに会ったって人は聞いた事が無いわよ。お父さんとお母さんも冒険者だったけど、会った事は無いって言ってた」
リチャ
「やはり幻の生物なんだな、ドラゴンは。しかし……この世界、ゴブリンやコボルトというのも見受けられるようだが。冒険者というのは、そういう相手とも戦ったりするのだろうか?」
ライカ
「うーん、お父さん達の話では戦う事はある。でも、ゴブリン達も人間達も、お互いに積極的に相手の種族に対して襲いかかるような事は少ないんだって」
リチャ
「なんと! それはウサギ的に驚きな所。しかし不思議だ、そういった別の種族は主に人間へ敵対するという話をよく聞くのだが」
ライカ
「敵対はしてるわよ。でも敵対しているからといって、必要以上に相手に干渉して殺し合ったりはしないって事のようね。ただ冒険者の中にはゴブリンの巣を調べたりする事もあるそうだけど」
リチャ
「なるほど、しかし冒険者と端的に言うが。冒険者の中でも、どんな職業を希望しているのだろうか?」
ライカ
「わたし? わたしはね、【剣士】志望かな。お父さんもお母さんも、二人とも剣士だったんだって言ってた。だから剣の使い方とかは二人に教えてもらったりしたんだ」
リチャ
「親直伝というのはかなり心強いな。かなり小さい頃から剣を握っていたという事なんだろうか」
ライカ
「うん、そうね。色々な事は全部、お父さんとお母さんから教えてもらったなぁ。特に冒険者は剣を握るだけじゃなくて、文字の書き方や書物の読み方。料理の仕方も含めて、村や町を離れた場所でも生きる為のすべてが必要なんだって」
リチャ
「驚きだ……文字の書き方、書物の読み方……冒険者と聞くと、主に武器を使って戦う事ばかり考えていたかと思っていたんだが」
ライカ
「昔は冒険者もあまり読み書きを学んでなかったらしいんだけどね。依頼とかでお金を支払う時、書面でやりとりする事もあるのよ」
リチャ
「もしかして、そうやって作られた書面を読む事が出来なかった為に、騙されたりしたという事なのか! ぐぬぬ、それは卑怯な……」
ライカ
「そういう事もあって、文字の読み書きを覚えるようになったんだって。それで書面によってやりとりで騙される事は減ったみたい」
リチャ
「しかし冒険者は色々な事を学ぶべく必要があるという事なのだな……ウサギちょっとだけ目からウロコですよ」
ライカ
「わたしも最初はわからなかったけど、一つ一つ丁寧に教えてもらって、理由までわかっているから。読み書きとかは大事なんだなって」
リチャ
「他に冒険者として大事な心構えとか教えられた事はあるだろうか?」
ライカ
「いくつかあるけど、【生き残る事】【信頼を裏切らない事】【依頼を果たす事】というあたりになるかしらね」
リチャ
「なるほど……どれも重要だな、非常に理解しやすい」
ライカ
「わたしは一番重要なのが【信頼を裏切らない事】だと思う。人と人との繋がり、それが何よりも大切な宝になるんだって……思うんだ」
リチャ
「ふむ、確かにそれはわかるな」
ライカ
「うちはこんな村で宿屋兼酒場をやっているんだけど、お店にやってくるお客さん達は、お父さんやお母さんが冒険者をやっていた時に知り合った人が多いんだって。その時に信頼していた戦友達が来てくれるから、繁盛してるんだって」
リチャ
「人の輪とはすばらしいな……何年経っても繋がっている、そんな信頼関係を結んでいけたらと思うよ」
ライカ
「と、話していたら到着ッ! そんな訳で宿屋兼酒場、プレーリー亭へようこそ!」
リチャ
「やほほぉーい♪ それじゃいっちょ、ウサギに似合う素敵でクールな部屋を。食事もじゃんじゃんお願いする予感!」
ライカ
「おまかせっ。すぐに準備するからね!」
……
……
リチャ
「……柔らかい干し草のベッド、準備されたたっぷりの新鮮なニンジンとレタス。隣には精悍な顔つきをした馬。どうみてもここは、宿の一室ではなくて馬小屋のようだった……しくしくしく(むしゃむしゃ)」
素直に寝る【003へ】
夜の街に繰り出す【005へ】